虚報太郎

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地球の長い午後

「地球の長い午後」というSF小説がある。人類文明崩壊後、気が遠くなるほどの時間が経ち膨張した太陽のもと、植物が支配する世界。人類は滅んではいないものの、体格は小さくなって知能も低下し緩やかに絶滅へと向かっている。

この話の魅力はなんといっても、その独創的でスケールの大きい植物たちにある。一本で大陸全部を覆うベンガルボダイジュ、ベンガルボダイジュの森の上から大気圏を越えて月にまで蜘蛛のそれのような巣をはぐりめぐらせ、行き来するツナワタリ、また数々の食肉植物たち。また、主人公の頭に寄生し知性を与える代わりに自由を奪うアミガサダケ

植物ではないが、見た目は魚だけど唯一歴史を継承しているソーダル。

想像を超えた存在を言葉で説明されても、当然ながら頭の中でイメージできない。そんな当たり前のことを再認識させるような、テンプレを組み合わせて作られた消化しやすい物語とは真逆の、読んでて頭の痛くなるような話である。しかし常識を超えた意味の分からない巨大な何かが闊歩する世界、人類以外の謎の知性が出てくる話というのはやはりかっこいい。

疲れるから二度読み返す気にはなれないが、その世界の衝撃は読み終わって何年も経った今でも残っている。