SUPERCARの1stアルバムは、90年代初頭にUKで起きたムーブメントであるシューゲイザーに影響を受けたものとして位置づけられている。ただ、パワーコードを基調とした曲作りやドラムの単調さ、また歌の投げやり感やギターの荒っぽい音作りなどなど含めて、一番影響を受けてそうなのはシューゲイザーのさらに源流であるThe Jesus and Mary Chainだと思う*1。個人的に特に重要な影響だと思うのは、メロディアスでポップながらも叙情に寄り過ぎない(今風に言うとエモすぎない)クールなところで、そのポップさとクールのバランスがかなりツボだったりする。また音だけでなく、いしわたり淳治の書く歌詞もSUPERCARの重要な要素だ。口語的で単純な言葉遣いをしつつ、韻をきっちり踏む歌詞は耳に心地よいし、内容も特に1stは10代の夢見がちな面とぼんやりとした不安が両方乗っているところがときどき痛いところもあるけど等身大な感じで面白い。
曲ごとの感想(曲数も多いので抜粋)
1.cream soda
初期SUPERCARを象徴するような一曲。このようにいしわたり淳治の印象的なギターフレーズから始まって最後まで引っ張っていくような曲はこのあと方向性が変わっても残っていく*2。
2.(Am I) confusing you?
スリーアウトチェンジの中でも特に歌詞が好きな一曲。内容としてはバンドをやる決意表明だと思っていて、バンドを本格的に始めることによる別れや、期待と不安をだれか(友達や恋人?)に宣言するように歌っている。
どの部分も好きだけど最後に歌われる
こんな僕に言えることは
そんなに大事なことじゃないけど
こんな僕が変われるなら
今しかないって気がするんだよ
というところは、少し後ろ向きだけど覚悟を決めている感じがいい。
4.DRIVE
ナカコーが一番初めに作った曲らしい。アルバム中で最初のフルカワミキメインボーカルで、アコースティック風なところが印象的だ。
6.u
かなり恥ずかしいラブソングなのにアルバム全体で一番音が歪んでいて重たい不思議な曲。
7.Automatic wing
よくよく聞くとuとイントロのコード進行が似ている気がする。
8.Lucky
シングルカットもされた人気曲。ナカコーとフルカワミキのデュエットで、Luckyとかいいつつ逆に失恋ソングなところが少しひねていてSUPERCARらしい。どうでもいいけど、自分がこのアルバムで一番初めに好きになった曲でもある。
後期に演奏された4つ打ち版Lucky
9.333
重ためな曲が続くところでくる、フルカワミキボーカルの3分ポップスで結構好き。後ろのHelloに通じる勢いの良さが心地よい。
11.My Way
イントロから流れる爽やかなギターのコードとベースのリフが素晴らしい曲。これまた恥ずかしい歌詞だけど、歌メロのポップさで聞けてしまう。
15.PLANET
実はストリングスを入れた大仰な雰囲気が苦手だった曲。とはいえ、曲自体素晴らしくこういったアレンジに飲まれているわけではないかと思えるようになり好きになった。
17.I need the sun
のちの曲にも通じる、ゆるい楽観主義的な歌詞が特徴的な曲。とはいえ例えば3rdアルバムの収録曲「Easy Way Out」と比べると、かなりそちらは諦観が入っている一方「I need the sun」はまだ希望にあふれているところが面白い。
18.Hello
バキバキのベースイントロではっと目が覚めるような曲。静と動の対比や90'sテクノぽいドラムがのれる。
19.TRIP SKY
解散ライブでも最後に演奏された、ラストの長いアウトロが印象的な曲。ぶつ切りで終わるところが何とも活きの良さを感じる。
あとがき
SUPERCARもといスリーアウトチェンジと出会ってはや3年も経っていた。ここまで長く聞き続けるアルバムになるとは思わなかったけど、当時は多すぎだろと思った19曲が飽きない大きな要因だったかもしれない。趣味が広がるきっかけになったとか、精神的な支えになったとかは特にないものの、またそのぐらいの距離感がちょうどいいのかなとも思う。この後のより洗練されエレクトロニカやミニマル音楽っぽくなっていくSUPERCARも好きだが、この初期衝動的な1stもなんだかんだ捨てがたい。