虚構太郎

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バイトできない 会話できない

『Os-宇宙人』という曲がある。『電波女と青春男』という入間人間原作のアニメがありそのopとして、の子(神聖かまってちゃん)により書き下ろされたもので、ざっくりいえば社会不適合そうな若者が唯一自分を分かってくれそうな人と出会うという歌だ。

「2年生 バカは一人」「こら不安定バイトできない 会話できない 空見上げる」とAメロで歯切れよく歌われる、どうしようもなくダメな感じは大袈裟ではあるものの共感もできて心地よいし、そんなダメでどうしようもない自分を歌ったのちにサビで自分を受け入れてくれる「あなた」という救いの存在が提示されたらもう聞いてる側からしたら大喝采だろう。

この歌詞の主格というのはアニメと対応させれば、歌っているのが声優であることからも分かる通りヒロインのエリオだと捉えられる一方、実は作詞作曲のの子の不遇だった学生時代の思いものっている*1。その性別の異なる人の残像が二重になることで、サビで語られる「ぱちくり見ているあなた」が単なる異性ではない、つまりよくあるボーイミーツガールの歌ではなくなっているように感じられるところが個人的に好きだったりする。それは『Os-宇宙人』には、エリオの声優が歌っているバージョンの他にの子本人が歌っているバージョンがニコニコ動画に本人によってあげられているところからも分かる。また歌詞も相手のことを「あなた」としてしか呼ばず、また好きになった理由も「きっとね何か掴んでくれてるあなたのことが好き」や「なんだかんだで側にいてくれてるあなたが好き」など抽象的な行為で示されており、「あなた」の具体的イメージは提示されない。

だから『あなた』というのは恋人と受け取ることも、友人と受け取ることも、またもはや二次元の存在と受け取ることも可能な自由さがある。逆を言えば、結局欲しいのは受け入れてくれる存在なんだろという根本的なところをついてきていると思う。

ただ最後に、「きっとあなたしか受信できないの」という限定があるところが引っかかって、ただこの`唯一君だけが分かってくれればいい`という思想はちょくちょく見かけることはある。これは持たざる者の卑屈さなのかそれとももっと根本的な欲求なのか、何なんだろう。

あと音に関しては、当時のかまってちゃんらしいなんともチープなピコピコシンセとベースドラムがドコドコと大きな音になっているところが、普通のアニソンのウェルメイドな感じからいい意味で外れていて面白い。

またこの曲のB面には『コタツから眺める世界地図』というこれまた興味深い曲があっておすすめです。

Os-宇宙人

Os-宇宙人

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*1:曲名の0sはの子の本名の大島から来ており宇宙人は学生時代につけられたあだ名であるらしい