虚報太郎

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6/12 妄想日記

夜風が吹く中外を歩く。ドブの臭いが空気の流れともに鼻にささる。嫌なことばっかりな気がするしそうでない気もする。当たり前のように耳にはまってるイヤホンからは音楽が鳴ってる。遠い国の意味のよくわからない言語で謳われている古い曲。音もそんなによくない。でも不思議とわかるような気はした。

通りの街灯はどこまでも続いていて、あたりをぼんやりと照らしている。そんなのを眺めていると、何だか歩き方もよく分からなくなってくる。ぎこちない、当たり前だと思ってたことから突然梯子を外されてしまう感覚。すごく不安になるけど、とにかく歩くしかなかった。多分ヨレヨレで、体の軸も狂ってて、効率の悪い動きだから帰る頃にはどこが痛くなっていそう。気がつけばビッショリと額や胸に汗をかいている。一呼吸整えた。違和感はずっとひいて何事もなかったかのようだった。それでも多分どこかおかしいのは変わらない気がした。

前から若者の集団が楽しそうに歩いてくる。俯いて早歩きで横を通り抜ける。音楽は終わってしまっていた。何を聞けばいいんだろう。

やがて歩いていくと、こじんまりとした公園を見つけた。ベンチと自動販売機がある。とりあえず自動販売機を眺める。別に好きな飲み物はなかったが、とりあえずコーラを買ってみた。木の固いベンチに腰掛けて、買いたてのコーラを飲む。味はあんまりわかんなかったけど、外で飲むという雰囲気に当てられて何だかいい気持ちがする。自分へのご褒美感。別に何もしてないけど。

ベンチに座ってコーラを飲んで1、2分ほど。もう退屈してきた。何だか風も冷たい。でも何か諦め切れずに座っていた。ポケットには一応本が入っている。ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟 中巻」。買って5年経つけどまだ読み終えていない。別に今も読む気はしなかった。結局スマホを見ている。マックを食べた時のような妙な背徳感があった。

10分ほど経ったとき、公園に人がやってきた。若い女の人で白いワンピースを着ている。他のベンチに座るとずっと俯いていた。何だか気になって横目で眺めているけど、ひたすら微動だにしない。いいかげん帰るかと腰を上げた。僕が公園を出たときも、その女の人は同じ姿勢で下を向いていた。何だかまた音楽を聞きたくなってスマホを開き、たまたま目に止まった「On the Beach」を流した。そこで始まるのは一曲目の「Walk On」。その緩いイントロのギターに何だか背中を押してもらった気分になって帰路に向かった。

https://youtu.be/Cby46XsFm7Y